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あいさつ文を考えようとしてもなかなか言葉が出てこない。
何から書けばいいのか分からない。
私は書くのは得意な方だが、なかなか言葉が見つからない。

太田さんと出会い、取材をしてもう2年経つ。
その2年は私にとってかけがえのない2年だった。
太田さんと彼を通して出会った人々、様々な出会い、喜び、挫折、紆余曲折があり、
今日に至る。
思い出が色々あり過ぎて、だからこそ、書けないでいた。
 
でも、これだけは伝えたい。
太田さんと出会い、私の中で変化があった。
太田さんとお客さんのコミュニケーションを見て衝撃を受けたことは
今でもはっきり覚えている。
お客さんは、最初は戸惑いながらも、太田さんの笑顔と珈琲で心が和む。
そして、筆談や身振りなどでやりとりが行われる。
双方の距離がすぐ縮まるのを何回も見てきた。

太田さんは聴者、ろう者関係なく、心をオープンにして接している。
お客さんは、太田さんをろう者としてではなく、
「アロハシャツを着たハワイの人にそっくりな店長」として見ている。
太田さんとお客さんの間にはあったかい空間が広がっていて
私はとても居心地がよかった。

私は、太田さんに会うまでは手話を知らない聴者とは距離を置いていた。
聴者にとって私との筆談は大変だし、めんどくさいだろう・・・という理由で、
自分から距離を作っていた。
手話を知らない聴者の前では声を出さなかった。
私の上手ではない発音を聞いて、ああ、聞こえないって大変ね。
かわいそうと思われたくなかったからだ。
聴者の世界で自分を出せない窮屈さを感じていた。
でも、それは自分が作り出した壁だったのだと気づいた。
私は太田さんのように、
相手が手話ができる、できないに関係なく、
自分の発音が上手か下手かを気にすることなく、コミュニケーションをとりたい。
せっかく出会ったのだから、その縁を大切にしたいと思うようになった。
そして、思い切って実行してみた。
すると、相手は意外と書いてくれる。
私に分かりやすく話してくれる。私は驚いた。
相手も私と話したいんだ。同じなんだ。
窮屈だった心がふわーっと広がるのを感じた。
それから、私は出さなかった声を出すようになった。

この映画のナレーションも私が担当した。
最初は、私の不完全な発音でこの映画の良さが損なわれたら・・・
ろう者と全く関わったことのない聴者にとっては見づらいものになってしまうのでは・・・
と悩んだ。
スタッフとも何回も意見を交換した。
そして、だんだん気持ちが固まってきた。一番大切なのは伝えたい気持ち。
私が感じたこと、私が伝えたいことを、私の声で伝えよう。
そして、あったかくてユーモアいっぱいの太田さんの笑顔と人柄が
あふれてくるような映画にして、
日本中の人たちに見てもらいたい!という気持ちが強くなった。

その時に東日本大震災が起きた。
毎日のようにテレビや新聞で被災地のことが報じられるが、ろう者に関する情報は
得られなかった。
私が取材して被災ろう者の声を伝えようと思い、映画製作を中断して東北へ取材に行った。
津波で家もお店も建物もなくなり、壊滅状態になっているのを目の当たりにし、
言葉を失った。
津波で家をなくした高齢のろう夫婦の話に心が痛んだ。

この映画には海やサーフィンをしている場面がある。
上映を延ばした方がいいのだろうか悩んだが、3回目の取材で被災地のろう者に
「防災で一番大切なことは何ですか?」と聞いた時、「地域の絆」と言葉が返ってきた。
近所の人との関係がよければ、お互いに助け合える。
家をなくしたろう夫婦は、警報が出ていることを近所の人から教えてもらい、
一緒に逃げたから助かった。
しかし、ろう者と聴者はコミュニケーションの方法が違うから、
そのために誤解やすれ違いが生じて人間関係にひびが入ってしまう。
お互いがコミュニケーションをとり、相手を理解していかないと絆は生まれない。
「地域の絆」と聞いた時、私はすぐ太田さんのことを思った。
太田さんは誰に対しても心を開いて会話を楽しんでいる。
だから、お店で開いているBBQや餅つき大会では地元の人やお客が100人ぐらい集まる。
人間関係が希薄になった現在だからこそ、この映画は意味があると思った。
より多くの人たちに見てもらいたいと思い、完成させた。

太田さんの夢と生き方、コミュニケーション。
何か一つでも感じるものがあればうれしいです。
いろいろな人が出会い、つながり、生まれたこの映画を、皆さんの元に届けることができて、
私は幸せです。
 
この映画を見てくださったあなた、
映画制作に協力してくれた太田さんと美苗さん、そして太田さんのご家族、
忙しい中、時間を作って協力してくれた制作スタッフ、
私の姉のような存在のプロデューサーの真美さん、
企業訪問、宣伝、チケット販売で駆け回ってくれた上映実行委員の皆さん、
そして、私を支えてくれた家族、友達、応援してくれるみんな、
みんな、本当にどうもありがとう。
 
2011.10.1 
今村彩子



今村彩子監督

「映画監督になりたい・・・・」

これが私の小学校時代の夢でした。

私が子どもの頃は、テレビ番組に字幕がついていなかったため、
家族と一緒にテレビを楽しむことが出来ませんでした。
寂しそうにしている私を見て、父はビデオレンタル店で字幕付き洋画を借りてくれました。
初めて見た映画は「E.T.」。
宇宙人と少年の友情物語に感動した私は、大人になったら、
多くの人に元気や勇気を与えるような映画を作りたいという夢が生まれました。

19歳の時にアメリカに留学し、映像制作の技術を学びました。
現在は、ろう者を取り上げたドキュメンタリーを制作しています。
取材をきっかけに出会った人々は150人以上。
少しでも多くの人たちに彼らの夢や想いを届けたい。
そして、一人ひとりが自分らしく生きることのできる社会を一緒に作っていきたいと思っています。

名古屋出身/Studio AYA代表

愛知県立豊橋聾学校高等部卒業/愛知教育大学教育学部卒業 
大学在籍中にカリフォルニア州立大学ノースリッジ校に留学し、
映画制作・アメリカ手話を学ぶ。

現在、名古屋学院大学・愛知学院大学で講師をする一方、
ドキュメンタリー映画制作で国内だけにとどまらず、アメリカやカナダ、
韓国、ミャンマーなど海外にも取材に行く。
主な作品である「珈琲とエンピツ」(2011)は、全国の劇場で公開される。
東日本大震災の被災した聞こえない人を2年4ヶ月間取材し、
「架け橋 きこえなかった3.11」(2013)を制作。
現在は新作「Start Line(スタートライン)」が全国各地で公開中。

今村彩子監督公式サイト http://studioaya.com/ 
ブログで撮影や上映活動などが見られます。

   
                   
   
● 受賞歴
             
 
2010年10月
社団法人全日本シーエム放送連盟
2010 50th ACC CMフェスティバル「北陸・中部地域テレビファイナリスト」受賞  
CM トキワ鉛筆 / 伝えたい(120秒)※ CMには、太田辰郎さんが登場しています。
2010年9月
日本民放連盟賞「CM部門」優秀賞受賞
CM トキワ鉛筆 / 伝えたい(120秒)※ CMには、太田辰郎さんが登場しています。
2008年11月
日本財団法人ソロプチミスト「社会人ボランティアの部」受賞
2008年6月
文部科学省選定作品に選ばれる
映画「サラリーマンライフ ~ろう者と聴者が共に働く職場づくり~」
2006年1月
文部科学省選定作品に選ばれる
映画「ユニバーシティライフ ~ろう・難聴学生の素顔~」
2004年2月
聴覚障害者映像フェスティバル大賞受賞
映画「ユニバーシティライフ ~ろう・難聴学生の素顔 第1部~」
2002年1月
第4回名古屋ビデオコンテスト優秀賞受賞
映画「こころのつぼみ ~エンジェルズの軌跡~」
2001年1月
第3回名古屋ビデオコンテスト優秀賞受賞
映画「めっちゃはじけてる!豊ろうっ子 ~愛知県立豊橋ろう学校の素顔~」